はじまり2

物件探しのため東京にスガくんがやって来た。

条件に合う所をいくつか内見して、直感で決めたらしい。

オレはスガくんと駅ナカのカフェで会っている。

「あとは親の同意をもらうだけ。オシャレ物件に憧れたんだけどなぁ…劇団受験のためのレッスンでお金出してもらったから、なるべく家賃を抑えた」

「その…劇団ってどういうこと?スガくんは役者志望だったの?」

「きっかけは高1の時の芸術鑑賞。らいおん王。よくわかんないけど、これだ!って思って」

観たことないけど、劇団ssowらいおん王ぐらいは知ってる。あちこちで宣伝してるから、しらない人の方が珍しいかもしれない。

研究生とはいえ、そんな有名どころへ合格するって何か持ってるんだろうと感心しつつ、新たにわく疑問。

「レッスンって、どうしてたの?」

「部活の合間縫って、劇団入るための予備校みたいな所の夜間部に1年通った。演技、歌、ダンス全部初心者だったから、大変だったけど楽しかった」

烏野の練習量こなしながら?

しかも推薦で決まった大学もレベル高めだから勉強もしながらってことだ。

さらりと爽やかになんでもないように話をしてるけど、コレ、普通じゃできないでしょ。

「これだ!って思いたって部活も勉強もして、レッスンに通うってなかなかできることじゃないよ」

「役者になりたいって言ったら両親は大反対で。姉ちゃんと弟なんて聞こえないフリだった。でも、ばあちゃんだけは応援してくれて。それで『劇団に合格できなかったら大学へ行く』って条件つきで両親を説得して、レッスンへ行かせてもらった」

「スガくんが自分の直感を信じて貫けたのはばあちゃんの応援あってなんだね」

「うん」

「そういえば、この前電話で誰にも言ってないって言ってたけど、レッスンに通ってたことも?」

「家族しか知らない」

「内緒にしてるの?」

「役者菅原孝支として板の上に立つまでは言わないでいようと思う」

こりゃ大変だ。

オレはスガくんの秘密を知る人間になってしまった。

そして心に決めたことがある。

「オレ、役者菅原孝支の1番最初のファンになるよ」

「ありがとう」

 

おしまい。

スガさんの直感と貫くチカラと楽しむ心。

ずっと書こうとしてた話。

形にできてよかった。